「シルバーレイン」麒麟寺いろ香(b04290)とネフティス・ヘリオポリス(b31266)の覚え書き等々。「シルバーレイン」をご存知ない方は回れ右をお勧めします。
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夏休みが終わっても、外の空気にはまだありありと暑さが残っていた。
それでもゴーストの群れる場所だけは例外のようで、
静けさがひんやりと冷気を放っている気さえする。
…鳴るはずのないチャイムが鳴り響くその学校に、少女と彼はいた。
来たばかりの国、入ったばかりの学園…。
使いこなせていない能力を少しでも自分のものにしようと来たはいいが、
まさに右も左もわからず途方に暮れていた、その時だった。
ばたり。
……不意に眩暈を覚え、視界がぐらりと反転した。
それでもゴーストの群れる場所だけは例外のようで、
静けさがひんやりと冷気を放っている気さえする。
…鳴るはずのないチャイムが鳴り響くその学校に、少女と彼はいた。
来たばかりの国、入ったばかりの学園…。
使いこなせていない能力を少しでも自分のものにしようと来たはいいが、
まさに右も左もわからず途方に暮れていた、その時だった。
ばたり。
……不意に眩暈を覚え、視界がぐらりと反転した。
…そういえば、朝から何も食べていない…。
いや、昨日の夜からだろうか…。
またご飯を食べるのを忘れてしまった……。
倒れてから、少女は自分がひどく空腹である事に気付いた。
あまり満足に食事を取れない事が多かったせいか、
日本に来てからもつい食べる事を忘れてしまう。
次は気をつけよう…などと考えを巡らせていると、
動けないその身を彼がそっと抱き起こしてくれた。
その優しい大きな手に、反省など消し飛んで少女はただ身を寄せた。
「あの……大丈夫ですか?」
不意に声がした。
顔を上げると、そこには蒼色の着物に身を包んだ女性がいた。
…いや、よく見ると年頃は近いのかも知れない。
暮れゆく空を思わせる深い青紫の瞳に、少しだけ幼さを感じた。
花を挿した漆黒の髪。
透けるように薄闇に映える白い肌。
上品な物腰と穏やかな声の…美しく儚げな、日本女性。
何か、こういう人の事を指した日本語があった気がする……。
ああ、そうだ。
「……ヤマトナデシコ……」
思わずその言葉が口を突いて出た。
言われた本人はきょとんとしながらも、気を取り直したようにさらに問う。
「あの……どうしましたか…?」
その声に、少女はようやく我に返った。
いけない…せっかく気を使って声をかけてくれた人に、失礼な事をしてしまった。
ちゃんと返事をしなければ…。
「………お腹……減る、したです………」
「…………」
妙な間ができた。
何かおかしな事を言ってしまったのか…。
それとも、日本語が間違っていたのかだろうか…。
そんな事をぐるぐると考えていると、彼女は突然笑い出した。
それはもう、可笑しそうに。
「わかったわ…良かったら、一緒にご飯、食べませんか…?」
わけがわからず彼女を見つめていると、そう言って手を差し出された。
しかし、ご飯を食べたいのは山々だが…。
「……でも、私……お金ない、ですので……」
「大丈夫よ、私がご馳走するわ。……立てる?」
彼女はいともあっさりとそう言い、花のように微笑んだ。
少し近寄り難く感じたヤマトナデシコの印象が、
その笑顔でやんわりと解けていく。
少女の様子を察した彼は静かに立ち上がり、礼を言うように軽く頭を下げた。
「あら…紳士なのね」
そう言って彼女はほんのりと微笑んだ。
彼の大きな腕の中にすっぽりと収まった少女は、
深々と刻まれいていた眉間の皺を少し和らげ、安心したように彼に身を寄せる。
「…そうね、さすがに外には一緒に行けないけれど…
途中までは、彼がいるから大丈夫ね…」
「………セト、です」
浸るように彼に身を預けていた少女は、ぽつりと言った。
彼の事を人に話すのは初めてだった。
…何となく、気恥ずかしい。
「…私はいろ香よ…。よろしくね、セトさん」
それを聞いた彼女はまた花のように微笑み、三人はその場を後にした。
…肝心の自分の名前を言っていない事に気付いたのは、
もう少し後の事だった。
いや、昨日の夜からだろうか…。
またご飯を食べるのを忘れてしまった……。
倒れてから、少女は自分がひどく空腹である事に気付いた。
あまり満足に食事を取れない事が多かったせいか、
日本に来てからもつい食べる事を忘れてしまう。
次は気をつけよう…などと考えを巡らせていると、
動けないその身を彼がそっと抱き起こしてくれた。
その優しい大きな手に、反省など消し飛んで少女はただ身を寄せた。
「あの……大丈夫ですか?」
不意に声がした。
顔を上げると、そこには蒼色の着物に身を包んだ女性がいた。
…いや、よく見ると年頃は近いのかも知れない。
暮れゆく空を思わせる深い青紫の瞳に、少しだけ幼さを感じた。
花を挿した漆黒の髪。
透けるように薄闇に映える白い肌。
上品な物腰と穏やかな声の…美しく儚げな、日本女性。
何か、こういう人の事を指した日本語があった気がする……。
ああ、そうだ。
「……ヤマトナデシコ……」
思わずその言葉が口を突いて出た。
言われた本人はきょとんとしながらも、気を取り直したようにさらに問う。
「あの……どうしましたか…?」
その声に、少女はようやく我に返った。
いけない…せっかく気を使って声をかけてくれた人に、失礼な事をしてしまった。
ちゃんと返事をしなければ…。
「………お腹……減る、したです………」
「…………」
妙な間ができた。
何かおかしな事を言ってしまったのか…。
それとも、日本語が間違っていたのかだろうか…。
そんな事をぐるぐると考えていると、彼女は突然笑い出した。
それはもう、可笑しそうに。
「わかったわ…良かったら、一緒にご飯、食べませんか…?」
わけがわからず彼女を見つめていると、そう言って手を差し出された。
しかし、ご飯を食べたいのは山々だが…。
「……でも、私……お金ない、ですので……」
「大丈夫よ、私がご馳走するわ。……立てる?」
彼女はいともあっさりとそう言い、花のように微笑んだ。
少し近寄り難く感じたヤマトナデシコの印象が、
その笑顔でやんわりと解けていく。
少女の様子を察した彼は静かに立ち上がり、礼を言うように軽く頭を下げた。
「あら…紳士なのね」
そう言って彼女はほんのりと微笑んだ。
彼の大きな腕の中にすっぽりと収まった少女は、
深々と刻まれいていた眉間の皺を少し和らげ、安心したように彼に身を寄せる。
「…そうね、さすがに外には一緒に行けないけれど…
途中までは、彼がいるから大丈夫ね…」
「………セト、です」
浸るように彼に身を預けていた少女は、ぽつりと言った。
彼の事を人に話すのは初めてだった。
…何となく、気恥ずかしい。
「…私はいろ香よ…。よろしくね、セトさん」
それを聞いた彼女はまた花のように微笑み、三人はその場を後にした。
…肝心の自分の名前を言っていない事に気付いたのは、
もう少し後の事だった。
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取り扱い説明
■キャラ設定やら何やら置いてあります。極稀に背後もしゃべります。極端なアンオフィになるようなものは無いと思いますが、苦手な方はご注意下さい。
■リンクやらコメントやらはご自由に~。
ふつーに喜びます。
■このブログに掲載されているイラスト作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権は「はち」に、著作権は各イラストマスターに、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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