黒曜石-流砂-

…彼と戦い続けて、もう何年が過ぎただろうか。

世界は変わろうとしている。
未来のために。
そう思ったらふと、そんな考えが頭を過ぎった。

黒曜石－宵闇と黒曜石－

夏休みが終わっても、外の空気にはまだありありと暑さが残っていた。
それでもゴーストの群れる場所だけは例外のようで、
静けさがひんやりと冷気を放っている気さえする。

…鳴るはずのないチャイムが鳴り響くその学校に、少女と彼はいた。
来たばかりの国、入ったばかりの学園…。
使いこなせていない能力を少しでも自分のものにしようと来たはいいが、
まさに右も左もわからず途方に暮れていた、その時だった。

ばたり。

……不意に眩暈を覚え、視界がぐらりと反転した。

黒曜石－雷鳴－

…雨はより、激しさを増していた。

「全て」を終えた少女はようやく自分がずぶ濡れである事に気付き、
何かを求めるように空を見上げた。

重く立ち込める雲、そしてその先には、遠雷が見えた。

黒曜石－再生の術－

確かにそれまで存在していなかったはずの「力」に、少女は気付いていた。
愛しい者を失うと同時に手に入れたそれは、
指輪から放たれる光と、そして…。

死者を蘇らせる術。

黒曜石－約束－

長い間　薄曇りだった空はより暗さを増し、
今にも雨が降り出しそうだった。

…少女は暫し、呆然と空を見上げていた。

今度こそ本当に、ぴくりとも動かなくなった彼の傍らで…。